コラム「先代の治療論」

肘内障

幼児はよく肘内障を起こします。

肘内障(デランジュマンテルヌ)の発生原因は、子供の手又は前腕を急に引張ったりした時に起こるものです。肘内障になると筋靭帯の圧迫により神経に負担をかけるため痛みが生じ泣きだしたり、食欲不振、元気がなくなったり、又ひどい時には手を上にあげる事さえ出来なくなってしまうものです。

そもそも、なぜ肘内障という疾患名をその子供が受けなければならないのか、 私達は得てして考えないものです。
そして一般的な処理の仕方として医者でも柔道整復師(接骨師)にしても肘内障だから回外法 (肘関節を屈曲させてから術者は肘に一手をそえ、他の手は握手型にしながら牽引、回外して橈骨小頭に圧迫を加えて施術)すればもとに戻せると言う事で治療してしまう。

しかし、私達の問題として肘内障になった以前に原因があったと考えなければならないと思うのです。
肘内障という疾患名は、結果であって結果を呼び起こしたものが原因になるわけです。その原因を探ってゆくと、子供は興味ある運動方向に進もうとする。 しかし、母親は家事その他をしなければと観念的に思い、その逆方向の運動に進もうとする子供と、当然反作用が起き間時接点に於いて不調和が生じ、この時点に発生するのです。
そう考えると子供に責任はなく、母親が子供の気を意識的に変えようとすることに無理が生じるのだと気がつかず、私の子供はひ弱であるとか良く病気をするとか愚痴をこぼす母親も少なくありません。
子供が真剣に遊んでいる時には母親は親という意識を捨てて逆に、子供の気の世界、興味ある遊び(運動)の世界に親が身心を子供にあずければ、子供の喜びは更に拡大し健全なる心が養われ、又この様なこともなくなると思うのです。