コラム「先代の治療論」

梅雨どきの健康維持はこんな工夫で

雨が降って蒸し暑い梅雨どき。この時期、みなさんはどのような生活をなさっていますか?
梅雨どきは、体調をくずしやすいものです。うっとうしい日々が続き、気持ちもふさぎがちになります。これはどうしてかというと、湿度がとても高いため、肌が湿気に覆われてエネルギーが発散されないせいなのです。

梅雨は暦の上では、6月11日から21日にかけての間だとされているようですが、実際には7月中旬あたりまで雨がよく降り、湿度が高くてすっきりしません。気温の差も激しく、昨日の気温が30℃もあって暑かったというのに、今日は20℃で肌寒いとか、その差は激しいものです。
梅雨の最中には、頭痛を訴えて来院される方がよくいます。 その原因は明らかに体を冷やしたことによります。当の本人はその意識がなく、ただ頭が痛くなったのだといいます。
しかし、よくよく聞いてみると、たいてい頭痛が始まる2、3日前に冷たいビールや麦茶をたくさん飲んだというケースが多いのです。そのうえ、クーラーのきいた部屋で寝ていたりします。
夏場とはいえ、体を冷やすことは体調をくずすきっかけになり、これがとんでもない重症につながることがあるのです。

そこでまず、「冷える」 ことと「冷やす」ことの違いを、みなさんにはしっかりと区別していただきたいと思います。

冷えるというのは、汗を拭かずにいたり、雨にうたれたり、クーラーをかけずぎて体が冷えてしまうことで、 たいへん体に負担になるものです。
冷やすというのは、腫れた患部を冷湿布したり、高熱時に頭部を冷やしたりと、必要があって処置することです。
体が「冷える」のは絶対によくありません。
とくに梅雨の時期は、汗をよくかくので注意が必要です。 汗は、気温が上がったり運動したりして体熱が上がるときに、体の表面を水分で覆い、それが蒸発することで体を冷やす役目をしています。
また、気持ちが緊張しているときにも汗は出ます。汗の成分は体の老廃物で、汗が出るということは疲労回復に役立っていることですから、ありがたいことなのです。

日常生活において、 わたしたちが注意しなければならないことは、汗を急に「引っ込めない」ことです。 汗を引っ込めるとはどのようなことなの か、説明したいと思います。
今日では家の中はもちろんのこと、 車にもクーラーがついています。出かける先々でヒンヤリと冷風にさらされます。また、風呂上がりのほてった体に、クーラーや扇風機を当てて涼み、かけたまま寝ると、一晩中体に 冷気を受け、出かかった汗がすっかり引っ込んでしまいます。

これを「汗の内攻」といい、これがのちのち響いてくるのです。
とくに首周りが冷えますと思わぬことになります。首には、脳に栄養を送っている椎骨動脈(ついこつどうみゃく)をはじめ、 迷走神経(めいそうしんけい)も通っています。胴よりもずっと細いのに、たいへん重要な首が冷えてしまうと、それが刺激となって動脈と神経の機能を低下させ、体の調子を狂わせるのです。 夏バテや食欲不振、咳、 手のしびれ、下痢、 体のだるさ、そしてさらにひどいと脳卒中にもなってしまう方もおられるのです。

梅雨の時期から秋の中旬までの暑い時期には、風呂から出てすぐにクーラーや扇風機を背中からかけることはしないようにしてください。もし、体が冷えたなと感じたら、 お風呂に入る前にミラクル体操(健笑苑オリジナル体操)をしましょう。

また、後頭骨と環椎(かんつい)の間に「督脈(とくみゃく)の脳戸(のうこ)」というツボがありますが、 その部位にドライヤーで温かい風を5~6分当てるのです。 蒸しタオルでその部位を温めてもいいでしょう。 その後、 お風呂に入ります。 ただし、お風呂から出たあと少なくとも40分以上経過してから寝てください。
そうしますと、ふだんよりいっそう汗が出てくるはずで、それによって快復していきます。 もし快復しづらい場合には布団の中で首に乾いたタオルを巻いて寝てみてください。